しもばの放浪日記

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UK&アイルランド自転車紀行〜アイルランド1〜
北アイルランド
↓2011.10.27
アイルランド


北アイルランドからアイルランド共和国へ。イギリスから別の国へと移ったものの『ここからアイルランド』という類の標識は全く存在しなかった。ただ地域名が変わることだけを表す標識。距離表示が“マイル”から“km”へと変わり、通貨がポンドではなくユーロになった。不安定な政治問題への配慮だろうか。もっとも、国道クラスの大きな道ならば普通に表示はあったのかもしれないが。

国が変わったところで地続きなので景色も特に変わらず。だが、一つだけ大きな変化があった。町の入り口に差し掛かると、"Best of Luck"の文字と共に2色のチェックの旗がたなびく。アイルランドでもっとも盛んなスポーツはサッカーでもラグビーでもなく、“ゲーリック・フットボール”と呼ばれる独自の伝統球技。その地区大会が架橋に差し掛かっていたのだ。カカシがユニフォームを着ていたり、藁のロールを包んだビニールに文字が書かれていたり、素朴で温かな応援グッズが田舎道を彩る。

スポーツといえば、イングランドやスコットランドのスポーツ文化もやはり目を見張るものがあった。マンチェスターやリバプールなど強豪チームのある大都市はもちろん、どんな小さな町にも(所属カテゴリーはともかく)必ず地元のサッカーチームがあり、週末になると人々がスタジアムへと繰り出していく。イングランドではあまりお目にかからないスコットランドリーグの話題も、スコットランドでは新聞のスポーツ欄の主役を張る。幸運なことに、スコットランドに入ったまさにその日にスコットランドリーグの大一番、セルティック×レンジャースの『グラスゴー・ダービー』をPUBで観戦することができた。PUBにも住み分けがあるのだろう。入った店はユニフォームをまとったレンジャースサポーターでひしめいていた。えげつない言葉でセルティックをののしるおばちゃん。見事に逆転勝ちを納め店は熱狂の渦に包まれた。

余談だが、レンジャースはイングランドの影響でプロテスタント化した市民のファンが、セルティックはカトリック系の市民のファンが多いらしい。同じ背景を持つアイルランドでもやはり同様で、複雑な問題を抱える北アイルランドのカトリック地区ではセルティックが絶大な人気を誇っていた。ひょっとするとスコットランドにいたときよりもその名を目にすることが多かったかもしれない。ちなみに『セルティック』とは『ケルト人の』という意味であり、エンブレムに描かれている三つ葉のクローバーはアイルランドの聖人『聖パトリック』のシンボルでもある。

とある土曜日、スコットランドの北部、Dingwallという小さな町を通った。すると、町中の人がユニフォーム姿で同じ方向に歩いていくではないか。人々の後を付けるとやはりそこには小さなスタジアムが。鹿の頭を象ったエンブレム。入り口の門には鹿の頭部の像が飾られていた。Fan Shopに足を踏み入れると、寒い地域ということもあってか防寒具ばかりが並ぶ。ホットミルクティーを片手に会場へと入っていく親子連れ。どうにも気になってウロウロしていたらなんとスタジアムのすぐ脇にキャンプ場を発見。これはもうここに泊まれという啓示に違いない。急ぎテントを張りチケットを購入。スタジアムへと飛び込んだ。

後からわかったことだが、この日見たのはRoss Countyというスコットランド2部のチームであった。このチーム、なんと今季優勝して昇格を決めた。来季は1部リーグでセルティックやレンジャースと戦うのである。(※と思ったらレンジャースは財務破綻で4部に降格……。)



アイルランドのTuamというこれまた小さな町に日曜の朝にたどり着いた。先日目にした新聞によると、今日この町でゲーリック・フットボールの州大会決勝があるらしいのだ。町中がやはり2色の旗に染まっている。こうなればぜひこの町に泊まって観戦したい。見つけたホテルは予約で埋まっており満室。道行く人に尋ねると、PUBの二階に簡易宿があるらしい。電話を掛けても誰も出ない。教会のミサにでも行っているのだろうか。そういえばさっき通った道に大きな教会があった。時間を潰しがてら自分も参加しようと聖堂へ足を踏み入れると、神父さんの立つ演台の後ろにも2色の旗が飾られていた。

その後、無事にチェックインを済ませ(やはり「教会で見掛けたわよ」と言われた)町へと繰り出す。応援グッズを売る店を見つけた。竹ざおに布をくくりつけただけの手作りの旗を購入、それを片手に道を行く。どの店のショーウィンドウも試合へのはやる気持ちを抑えきれない様子である。こじんまりとしたPUBを覗くと、試合を前に人々が一杯やっていた。中へ入りギネスビールを注文する。店内はゲーリック・フットボール一色。ユニフォームが壁を彩り、かつての選手たちの写真が並ぶ。スピーカーからは応援歌が大音響で流れる。きっとファンが集う店なのだろう。ビールを持ってきた店主に金を払おうとすると「必要ない」と言う。Tuam Stars(チーム名)の応援旗を持ったアジア人が珍しいのか、客も話しかけてくる。アイルランド訛りがキツくて何を話しているのかほとんどわからないが、機嫌が良さそうなのだけはよくわかる。連帯感を含んだ暖かい雰囲気が店の中に漂う。

いい感じに酔っ払い、外へ出た。何気なく店の看板を見上げる。そこに書かれた文字を見てハッとした。その店の名前はユニフォームに書かれている名と同じであった。町の小さなPUBがチームの胸スポンサーだったのである。ものすごい地域密着っぷりではないか。

会場は老若男女が集まり、地域運動会のような雰囲気だった。皆和気あいあいと試合が始まるのを楽しみにしている。決勝の相手は隣町のライバルチームだ。ブラスバンドの演奏の後に選手が入場。試合が始まった。ゲーリック・フットボールはオーストラリアで盛んなオージー・フットボールにも似た競技で、ボールを手で扱って行われる。パスはボールを拳で弾くか足で蹴るのみ。ゴールはサッカーゴールの上にラグビーのポールが立ったような形状をしており、ボールがポールの間を通れば1点、キーパーが守るゴールに入れば3点といった内容らしい。なんとも緩いというか荒いというか、といった展開の試合であったが、一つ一つのプレイに会場は大盛り上がり。残念ながら我がTuam Starsは敗れ去り、隣町の人々はピッチへとなだれ込んでいった。


アイルランドの公用語は英語と共に、ゲール語と呼ばれるアイルランド語である。だが、ゲール語を話せる人の数は減少の一途を辿っているらしい。当然、そんなゲール語を残していかねばならないという動きもあり、ゲール語だけで放送されるテレビのチャンネルもあったりする。そのチャンネルではしょっちゅうゲーリック・フットボールや、ハーリング(似たようなルールだが小さなボールをスティックで打って行う)の試合が流れていた。

その後もゲーリック・フットボールやハーリングは旅に彩りを添え続けた。ある町では図書館のショーウィンドウに並んでいる本がハーリング一色だった。またある日曜日には同じ旗をたなびかせた車が次々と自転車を追い越していった。進んでいくと果たして、次に着いた町が地域大会決勝の会場だった。PUBに立ち寄ると、人々が昼食を取りながら談笑していた。家族や友人たちと食事をし、酒を飲み、そして地元チームを応援しに行く。なんと素晴らしい休日の過ごし方であろうか。
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