エジプト
↓03.06
リビアカイロでの沈没生活を終え、たどり着いたのはリビアの首都トリポリ。5日間のビザなので、エジプト北部のアレキサンドリアからバスで一気に突っ走ってきた。その行程の景色はほとんどが砂地。だが、首都トリポリの景観は首都と呼ぶにふさわしいものだった。
入国の時は今までで一番緊張した。なぜなら、ビザが取れたものの国境に行ってみたら
「グループじゃないと駄目だ」
と追い返された、なんて話も聞いていたのだ。パスポートにスタンプを押されるまでは、そして押されてからも国境を越えきるまで、パスポートチェックのたびにドキドキものであった。
行ってみないとわからないことというのはたくさんある。もちろん、行ってみたところでわからないことだらけなのではあるが、それはそれとして、リビアというのはもっともっとクセのある、おかしな国なのかと思っていた。短い滞在で表面的に感じた限りではとても常識の通じる国であった。地理柄か、欧州の香りがほのかにする。スカーフをしていない女性も増えた。トレンチコートに革靴を履いたおっさんの姿も見える。さすがは旧イタリア植民地。国境を越えた途端にコーヒー文化圏になったのは面白かった。街のあちこちにカフェがある。店の中でタバコを吸ったら怒られた。エジプトという国にはほぼ存在しなかった"NO SMOKING"という概念に意表を突かれた。
リビアビザを取得するにはパスポートの名前などをアラビア語で併記する必要がある。この作業自体は特に難しいものではない。カイロの日本大使館にパスポートを持っていけば、変換したものをページに記入してくれるのだ。
なぜパスポートにアラビア語表記が必要なのか。なんでも政府の高官がヨーロッパで入国拒否されたために報復措置に出た、との噂だが、表向きは
「係員が英語ができないため」
などと言っているらしい。まあふざけた理由ではあるがそれも当たらずとも遠からずだと思っていた。これだけ閉鎖的なイメージがある国ならば英語もほとんど通じまい。
だが、違った。想像していたよりも遥かに多くの人が英語を解するのである。たとえば、街で道を聞くとする。アラビア語が話せないのでその場所の名称だけを連呼して、指で「あっち?こっち?」なんてジェスチャーしてみる。すると途端に、
"What do you want??"
なんて返される。移動中に立ち寄った食堂にも英語メニューが置いてあった。何よりも意外だったのは、外国人を珍しがったり敬遠したりするそぶりがほとんど感じられなかったことだ。
首都から程近いレプティス・マグナというローマ遺跡には、さすがに観光客の姿がちらほら見られた。それでもエジプトのような観光客の群れではないのでほど良い雰囲気だった。そして、中には日本人のおばちゃん団体客も。あれだけビザ取りに苦労して、待って待って、「そうそう簡単には来られない国に来てやった!」という達成感に満ち満ちていたのだが、なんてことはない、日本で旅行会社を通してお金さえ払えば随分と簡単に来られるということなのだろう。もっとも、自分もカイロでひたすらだらだらしていただけなのでそんなに苦労したとも言えないのだが。
じっくり廻るためには今のところ旅行会社を通してツーリストビザを取得するしかないのだろうか。見所も多いし人も親切だし主要な町にはユースホステルもあるし物価もそこまで高くはないしで旅行者にとっては魅力的な国だ。政府は解放政策に転化してきているようなので個人で簡単にビザが取れるようになったら、いずれまた。ただし夏場は50℃近くに達することもあるらしい。時期は選んだ方が良さそうである。