男は海を眺めていた。
初めての光景に目を奪われていたのだ。
何匹ものアザラシがサーフィンのごとく波に乗っては、波打ち際の海鳥を喰らっていた。
ふと、一羽の姿が目に入った。
「ああ、間違いなく食われるな」
男は思った。
その鳥は羽を痛めて上手く飛べずにいたのだ。
案の定、一匹のアザラシが海鳥へと向かっていった。
そしてアザラシは海鳥の前まで来ると、口からプッと魚を吐き出し、そのまま海へと去っていった。
アラスカで会った元漁師のおっさんの話。
真偽のほどは彼しか知らない。
そこに意味を持たせるかどうかも、人それぞれだ。